1.乾燥肌の原因だった?クレンジングによる“洗いすぎ・擦りすぎ”
乾燥肌とは、角層の水分やうるおいの不足とともに、水分の蒸発を防ぐ皮脂が不足してしまった状態の肌のことを指します。その原因は、大きく分けて以下の4つです。
- 加齢
加齢によるターンオーバーの乱れや、皮脂分泌量の低下によって起こるもの - 栄養(材料)不足
ダイエットなどによって栄養不足になり、肌細胞や皮脂の材料が足りずに起こるもの - 体質
アトピーなどもともと乾燥しやすい体質によって起こるもの - 自分の肌質にあっていないスキンケア
自身の皮脂分泌量や保湿成分量に合わないクレンジングや保湿方法によって起こるもの
これらのように、さまざまな原因で乾燥肌は引き起こされます。
特に、4番目にあげたスキンケアが原因の場合のみに焦点を当てると、実は“美肌のため”とおこなっていたクレンジングや洗顔が肌に合っておらず、乾燥肌につながっているケースがあります。
また、乾燥肌の方だけでなく、小鼻周りやおでこなど部分的な脂性肌(混合肌)でお悩みの方にも、このケースが当てはまります。部分的な脂性肌(混合肌)の原因は、乾燥であることが多いのです。毎日のクレンジング・洗顔で知らず知らずのうちに皮脂を洗い流し過ぎてしまっているせいで、本質的に足りていないのは「肌細胞の水分やうるおい」であるにもかかわらず、不足した水分を補うために、お肌は皮脂を過剰分泌してしまうのです。
2.乾燥肌の改善にクレンジングと洗顔が重要な理由
乾燥肌を改善するには、乳液や美容液、クリームなどによる保湿のスキンケアが一番重要だと考える方もいらっしゃるかもしれません。確かに、汚れだけでなく皮脂も洗い流した後の保湿スキンケアは、肌を乾燥から守るうえで大切なステップです。
しかし、乾燥肌対策やエイジングケアを考えたときには、実は洗顔後のケアよりも、クレンジングと洗顔のステップのほうが重要なのです。その理由は、クレンジングと洗顔こそが、最も肌にとって表皮に刺激を与え、皮脂を除去してしまう可能性が高い行為だからです。
そして、クレンジングと洗顔を組成する原材料やその質は、私たちが思っている以上に、お肌の状態や肌質に大きく影響を及ぼします。
それでは、乾燥肌でお悩みの方がするべきクレンジング方法やクレンジング料はどのようなものなのでしょうか?
3.乾燥肌におすすめのクレンジング料は、保湿効果があり摩擦の少ないオイルやバーム
乾燥肌や年齢肌でお悩みの方がクレンジングをするうえで大切なことは、「強力な洗浄力で皮脂やうるおい成分を落とし過ぎないこと」、「手やコットンで角質層を摩擦し過ぎて肌バリアを壊さないこと」の2点です。
この2点を踏まえて、特に乾燥肌の方におすすめしたいのは、オイルやバームによるクレンジングです。
3−1.“クレンジングオイルは乾燥する?”のウソ・ホント
乾燥肌の方におすすめのバームやクレンジングオイルですが、“クレンジングオイルは洗浄力が強くて乾燥するから乾燥肌には向かない”と考える方や、実際にお肌が乾燥してしまった経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この理論は半分正解ですが、半分間違いです。その理由は、クレンジングオイルの油の種類にあります。
オイルの主成分がミネラルオイル、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテンなどの「炭化水素油」や、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸イソプロピルなどの「エステル油」になっていた場合に、お肌の乾燥を感じがちです。
オイルクレンジングで肌の乾燥を招くのか、はたまた柔肌効果をもたらすのかは、クレンジングオイルの成分とその質が大きな分かれ道となります。
クレンジングはメイクや皮脂を落とすだけのステップだと思われがちですが、使用する商品の原材料とその質によって、効果は全くと言っていいほど異なります。
例えるならば、マーガリンとバターのようなものです。パッと見や用途は似ていても、原材料をしっかりチェックしていくと、植物性と動物性の違いがあったり、脂肪の主な構成要素「脂肪酸」の種類が異なったりします。当然のことながら、風味の質や体内でのはたらき、商品の相場も違ってきますよね。クレンジングオイルも、主原料として用いられている油の種類や、一緒に配合されている界面活性剤の種類やバランスの違いによって、マーガリンとバターのような差異が生まれ、肌への効果や価格が大きく変わるのです。
3−2.乾燥肌におすすめなのは、油脂が主成分の商品一択!同じ油でも効果は全然違う!
クレンジングオイルを、ベースとなっている主成分の油の種類によって大きく分けると、炭化水素油ベース、エステル油、油脂の3つになります。
表を見ていただくと分かる通り、主成分となっている油の種類が変わるだけで、洗浄力や保湿力、肌への効果はここまで違います。
ドラックストアで手にすることができる安価な価格帯のクレンジング料は、原材料の一番最初にミネラルオイルなどの石油を原材料にした「炭化水素油」や、『〇〇酸~ル』といった名で表記される「エステル油」が記載されていることがほとんどです。
これらの炭化水素油やエステル油は、安価で洗浄力が強いため、クレンジングオイルをつくる際にとても重宝されます。しかし、分子量が大きいために角質層への浸透性が低く、油分のなかでは最も水となじみにくいといった性質があります。
クレンジング料に含まれる油は、水と乳化させて洗い流すために「界面活性剤」の力を必要とします。界面活性剤は、お肌の荒れやかぶれの原因になることもありますが、炭化水素油やエステル油、特にミネラルオイルがベースとなっているものは、どうしても「界面活性剤」の力を強くせざるを得ないのです。その結果、強力なメイク落とし効果と引き換えに、必要な皮脂をも落としてしまい、乾燥肌につながるのです。
元々、ミネラルオイルやスクワラン自体は低刺激性で、乾燥を防ぐ目的で用いる場合には安価でとても安全性の高い油です。しかし、汚れを落とす目的でクレンジングオイルに配合された場合には、このような理由から乾燥肌を加速させてしまう原因になっていたのです。
4.乾燥肌におすすめのクレンジングオイルに使われる「油脂」ってどんな油?
乾燥肌におすすめのクレンジング料の主成分である「油脂」とは、動物や植物を由来として抽出された油のことです。基本的にクレンジングに用いられる油脂は植物性で、例をあげると、オリーブ油やコメヌカ油、アボカド油など、普段の生活の中で聞きなじみのあるような植物から得られる「〇〇油」と呼ばれるものがほとんどです。
クレンジングオイルやバームに用いられている植物性油脂の例
- マカダミアナッツ油
- トウモロコシ胚芽油
- オリーブ果実油
- アーモンド油
- コメヌカ油
- コメ胚芽油
- オリーブ油
これらの植物性の油脂がクレンジング料のベースとして用いられているとなぜ肌によいのかを、次で紐解いていきます。
4-1.油脂ベースのクレンジング料で得られる乾燥肌に嬉しいメリット
油脂がベースとなったクレンジング料で得られるメリットは以下のようなものがあげられます。
- 皮脂を落とし過ぎず、皮膚を擦りすぎないので、肌へのダメージが少ない
- 油脂に含まれる不飽和脂肪酸の効果で、角質層の柔軟効果が高い
- ほかの油に比べて、圧倒的に皮脂に似たつくりなので肌なじみがよい
- 皮脂膜を守ることで、肌のpH値を正常な状態(弱酸性の状態)に戻しやすい
- 固まった皮脂を溶かし毛穴のザラつきを解消する
- クレンジング後に使う美容液やオイルの浸透がよくなる
油脂ベースの商品でクレンジングをすることで、汚れを落とすというステップでありながらも、乾燥から肌を守りつつ、肌の柔軟効果や毛穴ケアまで網羅できるのです。
それでは続いて、油脂が肌に対してこれだけのメリットをもたらすことができる理由を詳しく見ていきましょう。
4-2.油脂と皮脂の脂肪酸の組成は似ている
私たちヒトの皮脂の構成は、なんと約4割は油脂です。そして皮脂の主要な構成要素である「脂肪酸」の内容をみていくと、パルミトレイン酸、パルミチン酸、オレイン酸が全体の脂肪酸の約6割を占めています。これらの脂肪酸は、先ほどのことから油脂は皮脂に近い成分であることがわかります。
また、これらの脂肪酸にこそ、保湿効果や、角質の柔軟効果、皮脂のつまりを防ぐ効果があるのです。
皮脂とクレンジング料に含まれていることが多い植物性油脂の脂肪酸組成をグラフにした場合、以下のようになります。いかに両者の脂肪酸のつくりが近しく、肌なじみがよいかが分かりますね。
4-3.肌の柔軟効果は不飽和脂肪酸のおかげ
前述の通り、炭化水素油やエステル油にはなく、油脂のみにある肌の保湿・柔軟効果は、油脂に含まれる脂肪酸による影響だと分かりました。
脂肪酸は、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸に分けられ、お肌*へのなじみや、柔軟効果が異なります。なかでも、不飽和脂肪酸は、テクスチャーがサラッとしていて、お肌*の柔軟効果がより高いとされています。
*角質層のこと
ちなみに、上記の脂肪酸を分類すると、以下のようになります。
- 飽和脂肪酸:ステアリン酸、パルミチン酸
- 一価不飽和脂肪酸:パルミトレイン酸、オレイン酸(皮脂に最も多く含まれる)
- 二価不飽和脂肪酸:リノール酸
- 多価不飽和脂肪酸:リノレン酸(皮脂には含まれない)
皮脂には飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸が多く、なかでも一価脂肪酸の割合が最も多くなっています。
5.もう間違わない!乾燥肌向けのクレンジング選びのポイント
乾燥肌の方には、油脂ベースのクレンジング料がおすすめだということをお伝えしてきました。では、実際に商品を選ぶ際に、炭化水素油やエステル油ではなく、良質な油脂がベースになっているクレンジング料を見分けるコツを伝授します!
5-1.原材料の一番最初にミネラルオイルやエステル油ではなく植物性油脂が記載されている
スキンケア商品のパッケージに書かれている原材料は、配合されている量が多いものから表記されています。油脂が主原料になっているものを選びたいときは、以下の成分が配合されているものをチョイスしましょう。
また、テクスチャーやコストの都合上、ベースとしては使われにくいものの、ブレンド成分として配合されていると嬉しい「不飽和脂肪酸」が豊富な油脂もあります。予算や美容効果に応じて、原材料に油脂が複数配合されている商品を選ぶのもおすすめです。
ちなみに、現段階では油脂が含まれているクレンジング料はオイルタイプがほとんどです。バームタイプもごくわずかながらあるようですが、基本的にはオイルタイプで調べましょう。
一般的にベースにされていることが多い油脂
- コメヌカ油
- オリーブ果実油
- ハイブリッドサフラワー油
- トウモロコシ胚芽油
ベースではないものの配合されていると嬉しい油脂
- マカダミアナッツ油(パルミトレイン酸が豊富で肌への浸透率が最も高い)
- アルガンオイル(リノール酸が豊富)
- ツバキ油(オレイン酸が豊富)
- アボカド油(オレイン酸が豊富、パルミチン酸が含まれている)
- アーモンド油(オレイン酸が豊富)
- ホホバ種子油(皮脂膜になるワックスエステルで出来ている)
「パルミトレイン酸」は、必要な皮脂を補って弾力のあるお肌へ導いてくれます。また、「リノール酸」にはお肌の水分をキープする働きが、「オレイン酸」にはお肌のゴワつきを防ぎ柔らかくしてくれる作用が、「パルミチン酸」には抗酸化作用やしわを抑える働きがあります。
メイン成分はもちろん、ぜひ、脇を固めるサポート成分も合わせてチェックしてみてください。
5-2.使用方法に「必ず乾いた手で使うこと」を指示する文言が記載されている
油脂がベースとなっているクレンジング料は、少しでも水分が入ってしまうと乳化が先に起きてしまい、メイクや皮脂の汚れを落とせなくなってしまいます。そのため、油脂ベースのクレンジング料は必ず乾いた手で使う必要があるのです。クレンジング料の中には濡れた手でも使える商品もありますが、そのような商品は、水分があっても強い洗浄力を発揮できる炭化水素油やエステル油がベースとなっています。必ず「乾いた手で使い、乳化が必要」なクレンジング料を選びましょう。
濡れた手でも使えるクレンジング料のベースに使われやすい油
【炭化水素油】
- ミネラルオイル
- 水添ポリイソブテン
- イソドデカン
【エステル油】
- パルミチン酸エチルへキセル
- エチルヘキ酸セチル
- トリエチルヘキサノイン
上記の成分がメインのものは、乾燥を引き起こしやすいため、特に乾燥肌が気になっている方は避けるのがおすすめです。
6.クレンジング後や朝の洗顔にも乾燥肌を防ぐポイントが!
油脂ベースのクレンジングによって、お肌を擦らず、優しく汚れを落とせても、その後の洗顔で皮脂を落とし過ぎてしまっては台無しです。乾燥肌を防ぐにあたって、クレンジング後にダブル洗顔をする場合や、翌朝の洗顔にも気をつけるべきポイントがあります。次で詳しくみていきましょう。
6-1.洗顔料はアミノ酸由来の弱酸性のものを!擦らず、短時間で洗い流そう
乾燥肌の方がクレンジング後に洗顔料を用いてダブル洗顔をするときは、アミノ酸系由来で弱酸性の洗顔料を選ぶことをおすすめします。
肌はもともと弱酸性に保たれていますが、バリア機能が壊れている乾燥肌の状態のときは、弱アルカリ性に傾きがちです。肌を弱酸性に戻す能力が衰えているときにアルカリ性の洗顔料で洗顔をすることは、さらに肌の回復を妨げ、肌トラブルを加速させかねません。肌にとって健康なpH値を保つためにも、弱酸性の洗顔料を選びましょう。
また、弱酸性の洗顔料だとしても、よく泡立てて使用し、短時間で洗い流して、なるべく皮脂を落とし過ぎないようにすることが大切です。
最近は、泡立てないジェルやミルクタイプの、より肌に優しい洗顔料も出てきました。洗いあがりや洗顔方法の好みに応じて商品を選び、皮脂を落とし過ぎない、お肌を擦らない洗顔を心がけましょう。
6-2.朝洗顔はお湯のみでもOK
皮脂を洗いすぎない、肌摩擦を極力減らすというのは、夜のクレンジング後の洗顔だけでなく、朝の洗顔でも同じです。
前日の夜にメイクや皮脂汚れを油脂ベースのクレンジングでしっかりと落としている場合は、“洗顔料を使わないぬるめのお湯洗顔”でも、肌を清潔に保てます。乾燥肌の方や、皮分泌量が比較的少なくなる冬季は、夜に自然に分泌されて出来た皮脂膜を守るためにもお湯洗顔にしてみましょう。
6-3.クレンジング以外のインナーケアも大切!食べ物からも不飽和脂肪酸を摂ろう
皮脂を守りながら汚れを落とすことはもちろん、乾燥肌の改善を促すためには、身体の内側からのインナーケアも重要です。
はじめにお伝えした通り、乾燥肌の原因は間違ったスキンケアだけではありません。私たちの肌は、新陳代謝によって毎日少しずつすべての細胞が生まれ変わっています。この肌の正常なターンオーバーを維持し、いつも乾燥しにくい若々しいお肌をつくるには、毎日の洗顔やスキンケアと同じように食事から得られる栄養の質にも目を向けることがとても大切です。私たちの肌を構成する細胞の膜は、油を材料につくられています。ですから、普段どの様な油を摂取しているかで、肌の皮脂の質や、細胞のやわらかさが変わるのです。乾燥肌を改善したい場合は、身体の中に取り入れる油も同じように、なるべく不飽和脂肪酸が多いものを選んで摂取しましょう。
7. まとめ
乾燥や年齢が気になる肌の原因には、実は洗いすぎや、皮膚の擦りすぎも含まれること、そしてそのような肌には油脂ベースのクレンジングオイルがおすすめであることをお伝えしました。
肌の柔軟効果がある不飽和脂肪酸は、食べ物から摂取することはもちろん、クレンジングで用いることも効果的です。
冬や年齢の乾燥に負けず、適度な皮脂のうるおいを保った肌にするためにも、しっかりとクレンジングや洗顔料の原材料を見極めて、優しくお肌を洗ってあげましょう。