迷信がうまれた背景

うなぎと梅干の食べ合わせが悪いと言われてきた理由には諸説あります。
ひとつは「贅沢戒め説」です。梅干には胃酸の分泌を促し、食欲を増進させる働きがあります。うなぎは古くから高級食材とされ、庶民にとっては贅沢なものでした。梅干と一緒に食べると食欲が進み、ついうなぎを食べ過ぎてしまうため、それを戒める意味で「一緒に食べてはいけない」と言われるようになったという説です。
もうひとつは「食中毒予防説」。かつての保存状態が十分でなかった時代、傷みやすいうなぎと酸味の強い梅干を一緒に食べることで、傷んだうなぎの味の変化に気付きにくくなる恐れがあり、食中毒を避けるため「一緒に食べるのは良くない」と伝えられてきたとも言われています。どちらも当時の食文化や体調管理の知恵から生まれた言い伝えといえるでしょう。
夏に気を付けたい食べ合わせ

うなぎと梅干は一緒に食べても基本的に問題ありませんが、胃腸の状態によっては注意したい点もあります。脂っぽいものと酸味の強いものは、胃腸に負担がかかり、消化不良の原因になることがあるためです。胃腸の弱い方は食べ過ぎに気を付けましょう。また、夏の風物詩であるスイカは天ぷらと良くない食べ合わせとして知られています。こちらも医学的な根拠はありませんが、胃腸の弱い方には注意が必要です。スイカは水分が多く体を冷やす作用があるため、胃腸の働きを低下させることがあります。一方、天ぷらは脂質が多く消化に時間がかかるため、胃腸に負担をかけやすい食べ物です。このように胃腸の働きを弱めるものと、消化に負担がかかるものの組み合わせは、体調次第で不調を招くこともあります。ただし、どちらも適量であれば問題はありません。特に夏は冷たいものを摂る機会が増え、胃腸が疲れやすい季節です。その日の体調に合わせて食事の内容や食べ方を工夫することが大切です。
夏に意識したい「土用の丑の日」

土用の丑の日とは、日本の暦の上での季節の区切り「土用」と、十二支の「丑の日」が重なる日のことです。本来「土用」とは、季節の変わり目(立春・立夏・立秋・立冬の前の約18日間)のことを指します。その期間に訪れる「丑の日(十二支の丑)」が土用の丑の日です。
とくに夏の土用の丑の日(7月中旬〜8月初旬)が有名で、この日はうなぎを食べる習慣が根付いています。うなぎは、古くから夏の暑さを乗り越えるための栄養補給として理にかなった食材です。今ではすっかりうなぎが“行事食”のように定着していますが、実はこの習慣、もともとは「丑の日に“う”の付く食べ物を食べると夏バテしない」という言い伝えがもとになっています。うなぎの他には「梅干」「うどん」「牛肉(うし)」「瓜(うり)」などが挙げられます。
“う”の付く食べ物の栄養ポイント
- うどん:さっぱり食べやすく、エネルギー補給にぴったり。消化がよく、具材を工夫すればタンパク質やビタミンも補えます。
- 牛肉(うし):アミノ酸スコアが満点の良質なたんぱく質。鉄、亜鉛、ビタミンB12も豊富で、健康維持に役立ちます。
- 瓜(うり):きゅうり、ゴーヤ、スイカ、かぼちゃなど。水分が豊富で体を冷やし、熱中症対策に効果的です。
管理栄養士からアドバイス

体質や健康状態によっては、食べ合わせによる不調が起きる可能性があります。いくら体に良いものでも自分の体調や体質に合わせて、食べる量や食べ方に気を配ることが大切です。また、夏は汗とともに水分やミネラルが失われます。体温調節のために自律神経が酷使されるため、エネルギー消費が増えることで倦怠感が出やすくなります。こまめな水分・塩分補給と、無理のない食事を心がけてください。
まとめ
- うなぎと梅干は疲労回復効果のある相乗効果の良い組み合わせ
- 迷信は昔の食文化や時代背景から生まれたもの
- 胃腸の弱い人は食べ合わせに注意
- 夏は“う”の付く食べ物で夏バテ予防を